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ある日突然、異世界に召還されたヒロイン。 よくあるテンプレのごとく『聖女』として祭り上げられ、 魔王軍との戦に参加させられることに……。 度々心が折れそうになったが 「魔王を倒せば元の世界に還す」 という皇家の約束を信じて、必死で戦い続けた。 真実が何処にあるのかもわからずに……

この物語の主人公

Story

ヒロインを支えたのは、帝国最強と謳われる騎士団長。
密かにヒロインを慕っていた騎士団長は、 ヒロインを元の世界に帰してあげたい一心で、 共に危機を乗り越えていった。

しかし戦いが終わった後に待っていたのは 「元の世界に戻る術はない」という残酷な真実で……。

「甘く切ない」だけで終わるはずだった二人の恋が形を変える時
――人類の歴史が動く。

アダム CV.八神仙

帝国騎士団団長。性格は実直で真面目。
女性にモテるが、一途で結婚に夢をみているタイプなので、 あまり女性経験はない。
密かにヒロインのことを慕っている。

ステラワース アニメイト アリスネット DLsite

Tracks

※DL版と内容は同じですが、CDに収録する関係でトラック2が二つに分かれています。

  • Track01 『忘れられた恋物語』≪Hシーン有り≫
  • Track02 『世界を越えても愛してる:前編』≪Hシーン有り≫
  • Track03 『世界を越えても愛してる:後編』≪Hシーン有り≫
  • Track04 『絶望』
  • Track05 『永久の契約』≪Hシーン有り≫

Product

タイトル/ 『召喚された聖女は真面目系騎士団長と世界を壊す』
ジャンル/ 18歳以上推奨 シチュエーションCD(ダミーヘッドマイク使用)
出演/ 八神仙
企画・監修/ 松竹梅
シナリオ/ 四七雪華
イラスト/ 心友
ブランド/ Deep Dusk
価格/ 【CD版】2,530円(税込)予定 【DL版】1,650円(税込)
仕様/CD二枚組
発売時期/【CD版】2023年12月22日(金)予定 【DL版】販売中
JANコード/ 4573211464610

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Story

恋人となった皇太子と必死で戦い続けたヒロイン。
しかし戦いが終わった後に待っていたのは、 皇帝の「元の世界に帰る術はない」という残酷な言葉だった。
しかも「代々の聖女は皆、皇家の子を産んだ」と言われ、 皇太子との子作りまで強制されてしまう。

――恋した人は裏切り者だった。
選ぶのは愛か憎しみか……
聖女の葛藤が始まる。

カイン CV.初時チェリー

最初はヒロインを快く思っていなかったが、 言葉を交わす内に互いに惹かれていき、恋人同士になった。
ヒロインへの純粋な好意と「真実を告げられない」という思いの間で葛藤する。

ステラワース アニメイト アリスネット DLsite

Tracks

  • Track01 『魂をかけた恋物語』≪Hシーン有り≫
  • Track02 『聞こえない本心』≪Hシーン有り≫
  • Track03 『明日への鍵』
  • Track04 『バッドエンド:どこまでも共に』
  • Track05 『ハッピーエンド:伝説の終わり』≪Hシーン有り≫

Product

タイトル/ 『召喚された聖女は裏切りの皇太子と世界を正す』
ジャンル/ 18歳以上推奨 シチュエーションCD(ダミーヘッドマイク使用)
出演/ 初時チェリー
企画・監修/ 松竹梅
シナリオ/ 四七雪華
イラスト/ 心友
ブランド/ Deep Dusk
価格/ 【CD版】2,530円(税込)予定 【DL版】1,650円(税込)
仕様/CD二枚組
発売時期/【CD版】2023年12月22日(金)予定 【DL版】販売中
JANコード/ 4573211464627

各種特典情報

Story

「魔王を倒せば元の世界に還す」と言う 皇家の約束を信じて戦い続けていたヒロイン。
しかし「奇人」といわれる第二皇子『アベル』と出会ったことで、皇帝の嘘を知る。
絶望しかけたヒロインに、アベルは 「俺だけは元の世界に還す術を知っている」と密約をもちかける。
アベルの魔術の才能に一縷の望みをかけ、 最後まで戦い抜くことを心に決めたヒロインだったが……

――恋した人は、愛を貫くために道化を演じ続けた。
信じるべきは『言葉』か『想い』か……
真実は扉の向こうにある。

アベル CV.皇帝

天才的な魔術師である第二皇子。
「奇人」「狂人」と囁かれているが、多大な功績を残しているため見過ごされている。
拾ってきた女と戯れては、飽きたら殺してしまう残虐な男だと言われているが……

ステラワース アニメイト アリスネット DLsite

Tracks

  • Track01 『淫夢』≪Hシーン有り≫
  • Track02 『変わり者の第二皇子』
  • Track03 『奇人との約束』
  • Track04 『仮面に入るヒビ』≪Hシーン有り≫
  • Track05 『召喚の真実』
  • Track06 『バッドエンド:告白は扉の向こう』
  • Track07 『ハッピーエンド:この世界で永久に』≪Hシーン有り≫

Product

タイトル/ 『召喚された聖女は偽りの道化と世界を騙す』
ジャンル/ 18歳以上推奨 シチュエーションCD(ダミーヘッドマイク使用)
出演/ 皇帝
企画・監修/ 松竹梅
シナリオ/ 四七雪華
イラスト/ 心友
ブランド/ Deep Dusk
価格/ 【CD版】2,530円(税込)予定 【DL版】2,200円(税込)
仕様/CD二枚組
発売時期/【CD版・DL版】2023年12月22日(金)予定
JANコード/ 4573211464634

各種特典情報

特典情報

ステラワース

『三巻連動』 特典

ステラワース限定 三巻連動購入特典
3キャラが描かれた 『描きおろしクリアファイル』


(ご注意)
対象はステラワース様で三巻全てご購入になられた方のみです。
同時ではなくバラバラにご購入されても、ご購入時の証明を提示することで特典はつきますが、その場合の特典入手期限は『最初のご購入時から三カ月以内』です。

三巻『第二皇子編』 特典1

ステラワース限定
録りおろし 『特典ドラマCD』 CV皇帝


タイトル / 『唯一無二の』
【あらすじ】
ハッピーエンド後の後日談。
ヒロインはアベルがとあるものを使っていたことに内心では嫉妬していた。
その気持ちを思い切って打ち明けると、
アベルは「わかった」とだけ言って研究室にこもってしまう。
このまま触れあえなくなるのかと落ち着かないヒロインだったが、
翌朝、アベルが持ってきたもので予想外のHが始まってしまい……。

――苦難を乗り越えた二人の、甘く愛おしい日々の一幕。

※Hシーン有り

三巻『第二皇子編』 特典2

ステラワース限定
書きおろし 『SS小冊子』


タイトル / 『昔日』
【あらすじ】
本編のトラック4をアベル視点でSS化。
とある致し方ない理由でヒロインを抱くことになったアベル。
余裕のある顔を装っていたが、その心中は激しく乱れていた。
ヒロインを優しく抱きながらも、
「愛していない」と口にするアベルの本心は……

※Hシーン有り

他 特典

一巻、二巻、三巻、それぞれのCDに付属するL版ブロマイド


アニメイト

三巻『第二皇子編』 特典

アニメイト限定
書きおろし 『SS小冊子』


タイトル / 『未来』
【あらすじ】
ハッピーエンド後の後日談。
アベルと結ばれたヒロインは、とある方法で地球の家族に声を届ける。
家族に無事を知らせて一安心していたヒロインだったが、
アベルの様子がおかしくなり、彼のことが心配でソワソワしてしまう。
なかなか口を割らないアベルに痺れを切らしたヒロインは、
彼を押し倒し……

※Hシーン有り

アリスネット

三巻『第二皇子編』 特典

アリスネット限定
書きおろし 『SSペーパー』


タイトル / 『道化は嫉妬を隠せない』
【あらすじ】
ハッピーエンド後の後日談。
聖女としてカインの視察に同行することになったヒロインは、
アベルと離れる寂しさを感じつつも、彼のためにも役目をこなそうと気合いを入れる。
そうして、やっと帝都に戻ってこられた一週間後――
ヒロインは喜びに胸を躍らせてアベルのもとに帰ったのだが、
ヒロインとは対照的に、アベルはなんとなく苛立っている様子だった。
理由を問うと、アベルは耐えかねたように強引なキスをしてきて……

※Hシーン有り

DLsite

三巻『第二皇子編』 特典

DLsite.com限定
録りおろし 『特典ドラマ』 CV八神仙


※上記特典は三巻『召喚された聖女は偽りの道化と世界を騙す』のデータに同梱されている特典です。
一巻『召喚された聖女は真面目系騎士団長と世界を壊す』には同梱されていません。


タイトル / 『魔王の歓喜』
【あらすじ】
魔王から『聖女』を助け出そうと人間の男がやってくる。
しかしその者はヒロインが魔王の伴侶になっていると知ると、
怒りに駆られてヒロインを突き刺してしまう。
ヒロインが死を覚悟した時、魔王であるアダムはある提案をしてきて……。

魂どころか肉体まで魔王に侵食され、
さらなる淫靡な悦楽に堕ちていく――

※Hシーン有り

DLsite

三巻『第二皇子編』 特典

CD版限定
書きおろし 『ブックレット内 SS』


タイトル / 『あの時、貴方の手をとったから~アベル編~』
【あらすじ】
本編の前日譚。
聖女をお披露目するための舞踏会で、アダムとカインの二人から同時にダンスを申し込まれる。
気まずさから嘘の理由をつけて逃げ出したヒロインは、美しい噴水の前で「狂人」と噂される第二皇子『アベル』と出会う。
最初は警戒したヒロインだったが、話してみると意外と優しい人物に思えてきて……

召喚聖女シリーズの世界を深める主題歌。
登場人物たちの切実な願いが詩となって綴られる。

騎士団長編、皇太子編 主題歌 『永久に、深く』

作曲/シロ 作詞・歌唱/鈴葉ユミ ※DDファンティアに掲載

第二皇子編 主題歌 『セカイ穿つ道化者』

作曲/シロ 作詞・歌唱/鈴葉ユミ ※DDファンティアに掲載

シリーズ主題歌 『Ramification』

作曲/シロ 作詞・歌唱/鈴葉ユミ ※DDファンティアに掲載

PV

【騎士団長編】


【皇太子編】


【第二皇子編】


【主題歌 第三弾 『Ramification』 】




キャストコメント 【アベル役 皇帝様】

【アベル役 皇帝様】
■Q1 今回演じていただいた『アベル』というキャラにつきまして、皇帝様の印象をお教えください

最初ものすごく頭の切れる俺様系キャラクターだなぁと思ったんですが、
物語が進むにつれそれはあえて彼自身が作ったキャラだったと分かり、
彼女を想う優しい心も持ち合わせているんだなと思いました。
あと結構ヒロインに振り回されるアベルが可愛いなぁと。
ギャップがイイですね!!


■Q2 アベルを演じる中で特に力を入れたポイントがあればお教えください

まずは奇人というか天才というか、
俺様でグイグイいくアベルをしっかり演じたのでそれを楽しんでもらいつつ、
その後の心の揺れ動きや変化という部分を丁寧に演じさせていただきました。
こういう作品で重要な濡れ場のシーンも俺様部分もあれば、
優しさの部分もあって演じ分けが楽しかったです。
その違いも楽しんでもらえたら嬉しいですね。


■Q3 一番印象に残っているシーンをお教えください

物語が分岐するんですよ。
その分岐の辺りは結構シリアスなシーンなんですが、
あまりそれを前面に押し出さないように、
裏の気持ちを見抜かれないようにサラッと演じたりしています。
なので分岐前も後も、どちらも全部頑張って演じさせていただいたので、
そこは聞いてもらいたいですね。
あと店舗特典CDのお話もなにげに僕は好きです!!
是非これも聞いて下さい☆


※他キャスト様のコメントもDDファンティアに掲載



漫画『アダム編』

欲しいのはアナタだけ――アダムの世界を壊すほどの一途な愛が漫画で描かれる。
【漫画】尽









(補足)
◆アダムが魔王化するのは最初からわかっていることなので、
こちらの漫画はネタバレの内容ではございません。
視聴前の方も安心してご覧ください。
◆転生者が出てきますが、普通はあの世界でも転生したら前世の記憶は消えます。
ですが息絶える時にものすごく思い残したことがあると魂に傷がつき、
何度生まれ変わってもずっと消えない……ということもあります。
転生しても消えない『彼』の呪いのような強い恋情を感じていただけたら嬉しいです



前日譚SS 『あの時、貴方の手をとったから』

著・四七雪華 監修・松竹梅


 夜の闇をものともしない豪奢なシャンデリアが、広いホールの隅々まで照らしている。『魔石』とやらが使用されているせいか、真昼なみの明るさだ。天井に描かれた宗教画らしきものの印象もあいまって、実に美しく、神々しく……忌々しい。

 この日のために作られたという数々の聖女像――なんと私の平凡顔――を全て倒してしまいたい。
 高価で重い首飾りは引きちぎって、邪魔な指輪とセットで遠くにぶん投げてしまおう。
 身軽になったら、そびえたつ巨大なケーキを貪り食べる。
 残りは上のほうでふんぞり返っている皇帝の顔に投げつけられたら最高だ。生クリームまみれにしてしまえ。
 ……もったいないから、全部妄想するだけで実行しないけれど。

(こんなふうに思ってる人間、この舞踏会の会場では私だけなんだろうなぁ)

 大勢の貴族たちが『聖女』を迎えられた喜びで、顔を綻ばせている。
 だけど皆のテンションが上がっていくのに反比例して、私の気分は下降の一途をたどっていた。
 苦痛に歪んだ口元を扇で隠し、ぼそりと呟く。

「こんな豪華な舞踏会、税金の無駄遣いじゃない?」

 宮廷楽団が奏でる音楽は、私の不敬でしかない呟きをかき消してくれる。
 それをいいことに、表面上は微笑を保ちつつ扇の内側で文句を連ねた。

「このコルセット、つけてるだけで地獄なんだけど。肋骨折れそう。ヒールも高すぎて足が死ぬ。ドレスなんて鎧かってくらい重いし。ああ、もう、今すぐ下着一枚になってベッドにダイブしたい」

 他の高貴な淑女が耳にしたら「なんて品のない」と仰天すること間違いなし。私に無理やりつけられたマナー講師も、きっと静かに怒り狂う。
 わかっていても、止められない。勝手に召喚された時の怒りの炎が、ずっと胸の奥でくすぶっている。
 なんとか不満を飲みこんで視線をあげれば、幼い少女を伴った男性が目に入った。たぶん父親とその娘だろう。
 元の世界の家族や友人を思い出して切なくなった。

(みんな、元気でいるかな。ここに来る前、お父さん、ギックリ腰になってたんだよね。お母さんは風邪ひいてたし、お婆ちゃんとお爺ちゃんは畑が大変だって困ってた。収穫を手伝うって言ってたのに、結局何もできなかった……。イブリンに借りた本も返せてない)

 イブリンは留学時代にできた、金髪碧眼が美しい大の親友だ。
 召喚時は私の国に来ていて、地元を案内してまわる予定だった。

(全部、全部、召喚のせいでできなくなってしまった)

 そんなふうに棘ついた気分でいたから、余計な囁きを拾ってしまったのだろう。「聖女様が降臨してくださったのは有難いが、あの髪色は……」と一人の貴族が眉を顰めていた。

「……?」

 私の髪色がなんだと言うのだろう。
 向けられた批難めいた視線に困惑し、小さく首を傾げる。さりげなく毛先をいじった私は「そういえば」と召喚された時の光景を思い出した。

(あの時、魔術師たちに容姿で驚かれた気がする。上のほうをチラチラ見られてたけど、あれって髪のことだったのかな。暗い髪色は醜いとか、そんな美意識があったり?)

 不思議に思えど、誰も詳細を説明してくれないからわからない。

(私の機嫌を損ねたら、また魔王と戦わないって言い出しそうだから、知られたら不味い内容は伏せてるんだろうな)

 大体の城の人間は私に優しい顔をしながら、肝心なところでは不親切だ。存在を「有難い」と拝みはするけれど……私が癒しの力を行使しても、どこか「当たり前」と思っていそうな節がある。彼らの様子から察するに、たぶん私のほうが異端なのだろう。

 聖女には、人々を救う義務がある。
 聖女は、人々の助けとなることに喜びを感じる。
 聖女が困っている民を放って帰還を望むなど、ありえない。
 ――人々の目が、そう言っている。

「はぁ……」

 物理的にも精神的にも腹部を締めあげられているせいで、胃が痛い。息が苦しい。華やかな舞踏会の会場にいながら、たった一人でいるようで、孤独感が増す。

 辛い。
 帰りたい。
 家族に会いたい。

 ――募る思いで過呼吸気味になってきた頃、霞んだ視界の中央に、大きな手が差しだされた。

「こんばんは、聖女様。もしよろしければ、私と踊っていただけませんか」
「あ……」

 重く感じていた頭が、少しだけ軽くなる。
 思わず縋るような視線を向けてしまったのだろう。目があった男性――唯一味方だと思える騎士団長のアダムが、気づかわしげに目を細めた。私が思考を立て直す数秒の間、窺うふうに首を傾げる。銀糸と見紛う髪が肩口からこぼれ、シャンデリアの光を弾いた。

(天然のキラキラフィルター)

 今日は正装の効果もあって、いつもよりさらに輝いて見える。
 濃い陰影を作る目鼻立ちや逞しい体つきは、彫刻よりもそれらしい。たぶん私なんかよりもアダムをモデルにした像を飾ったほうが、喜ぶ人が多かったはずだ。等身大で再現したら、こっそり抱くつく淑女がいるに違いない。

(訓練でほぼ毎日会ってるのに見惚れちゃうって……。私って面食いだったのかな。……いやいや、これはアダムがカッコよすぎるからであって――)
「やはりご気分が優れませんか?」

 私が黙っているから心配してくれたらしい。神秘的な紫の瞳にじっと見つめられる。
 それにも見惚れそうになった私は、ようやく我に返って首を振った。

「あ、いえ!大丈夫です」
「はは。私には敬語は不要だと何度も申し上げたでしょう。この世界で貴女ほど高貴な女性はいないのですから」
「高貴じゃないけど……えっと、そうだったね。大丈夫、だよ」
「ふふ、良かった」

 アダムの安堵の表情を見て、体調不良を理由に皇族から離れたのを思い出した。
 たぶん毎日一緒にいるアダムは、それがただの逃げ口上だと気が付いたのだろう。
 だからこうして、私の体調を確認する目的をかねてダンスに誘ってくれたのだと思う。

「ご体調が回復されたようでしたら、聖女様と共に踊る栄誉をいただけますか」
(あ、そうか。あの慣習のことも心配してくれてるんだ。……本当にアダムは、出会った時から優しいな)

 この国には、舞踏会に出たら必ず誰かと一回は踊らなくてはいけない……という厄介な慣習がある。つまり今アダムの誘いを断れば、気心の知れていない相手と踊らなくてはいけないのだ。最たる例でいうと、

(皇族の人たち、とか)

 正直、皇族の人たちは苦手だ。私をこの世界に召喚したからという理由もあるけれど、最近ではもう一つ嫌な要素が加わった。

(あの皇帝、どうも息子と私をくっつけようとしてる感じがするんだよね)

 皇帝の命令で何かと理由をつけて二人きりにさせられたのは、一度や二度ではない。強制参加の食事会の席、城内の案内、城下町の視察、孤児院の慰問等々――気がつくと護衛が離れ、皇太子と二人になっている。

(なんというか、お見合いの席でよくある『あとは若いお二人で……』的なノリなんだよね。私はいずれ帰る身なんだから、あれは本当にやめてほしい)

 数々の嫌な記憶を溜息で吐きだし、アダムに向き直る。
 ダンスは大の苦手だけれど、こうなったら有難く助けていただこう。
 安堵の気持ちでニッコリ微笑めば、アダムも嬉しそうに顔を綻ばせた。
 無言でいると冷たく見えるけれど、こうして笑うと柔らかな印象になる。

(きっとこの差で、淑女たちは恋に落ちてるんだろうなぁ)

 なんて考えていたら、広いフロアのそこかしこから嘆きとも賞賛ともつかない声が聞こえた。「氷の騎士様が」とか「剣が恋人のアスピディアス卿が」とか、とにかく信じられないといった内容だ。
 心なしか、私を見る一部淑女たちの視線が鋭い。

(これは……さっと踊って退散したほうが良さそう)

 ある種の身の危険を感じて、早期撤退を考えている時だった。

「――ご体調が回復されたようで何よりです」

 高貴さをそのまま表したような声を聞いた瞬間、心の中で「あぁ」と頭を抱えた。
 振り返った先にあったのは、希少なルビーを彷彿とさせる赤い瞳。

「これで私と踊れますね、聖女様」

 私が苦手とする皇族で、まさしく先ほどまで考えていた人――皇太子カインが、そこにいた。
 苦手意識からすぐには反応できず、人形めいた綺麗な顔を見つめるだけになってしまう。
 カインはアダムとはまた違ったタイプの美貌の持ち主で、人目を引きつける。

(でもこの人、苦手というか……恐いんだよね)

 たぶん百人に聞いたら、満場一致で「美しい」と言われる顔をしている。好みがどうであれ、有無を言わせない完璧な黄金比なのだ。だからなのか、彼の微笑を見る度に作りものを見ているようで恐くなる。なにより、目の奥が笑っていない気がして寒気がする。――要約すると、アダムと違って信用ならない。

(どうやってかわそう)

 私が身構えたのを察したのか、カインがこれまた嘘くさい綺麗な苦笑を浮かべ、小首を傾げた。動作に伴ってクセのない真っ直ぐな黒髪が揺れ、白い頬に影を作る。

(今日もさらさらツヤツヤの綺麗な髪だな。どうやって手入れしてるんだろう)

 その色を見る時だけ、私の心は少しだけ和む。黒髪は、私の故郷を思い出させるから。
 けれどこれすら、彼にとっては計算の内なのだろう。

(侍女の人たちが『前は髪を隠すお召し物を好んでいらっしゃったのに』ってコソコソ話してたのを聞いちゃったんだよね)

 つまりカインは、私に見せるために黒髪を晒すようになったのだ。恐らくは『反抗的な聖女』の警戒心を解かせるために。
 それが皇帝の命令なのか、彼自身の意思なのかは知らない。しかしどちらにしても、あまり嬉しくないことだ。好意による変化ではないとわかるから、逆に警戒心が増す。

「えっと――」

 感情のままに断ろうとした私は、カインの頬に走った赤い傷を見て、言葉を喉に詰まらせた。罪悪感で舌が凍りつく。

(治してくれって言ってこないのは、たぶん……あえてだよね)

 先日、私の訓練もかねての遠征があり、魔物の討伐を行った。
 その時力を使いすぎて倒れた私を、カインは介抱してくれた。
 問題は、それが驚きの方法だったことで……。

(あの時アダムが一番近くにいたら、違う展開になってたのかな……)

 なんとカインは、気を失った私に回復薬を飲ませるために、口移しで薬を飲ませたのだ。
 意識を取り戻した瞬間、私は驚きすぎて思いきり平手打ちをしてしまった。しかも指にはめていた魔道具で彼の頬を傷つけてしまったものだから、二倍うろたえた。驚いただけで、彼を傷つけたいわけではなかったから。
 当然私は、すぐさま治療を申し出た。
 だけど当のカインは「自然に治せるものは、あまり魔法を使用するべきではない」と言って、私の治療を拒んだ。
 そうなると、もう何も言えず……今に至る。

(私としては罪悪感がすごいから、さっさと治させてほしいんだけど……。本人が拒んでる以上、皇族の体に無許可で魔法をかけるわけにはいかないし……)

 そんな理由があるから「殿下が相手では嫌です」とは言いにくい。というか先日の私の非礼を考えたら、カインの申し出を受けるべきなのだろう。

(うー、でもなぁ……)

 カインが私を好きではないのは、なんとなく察している。あれは恋する人の目ではないし、視線に情熱の「じょ」の字もない。
 それでもカインは「一目惚れをしました」なんて大嘘を吐いてくる。
 そんな胡散臭い人間と密着したい女がいるだろうか?
 つい眉根を寄せてしまったら、アダムが助け舟を出してくれた。

「殿下。恐れながら、私が先に申し込んだのです。皇族でいらっしゃるからこそ、ここは広いお心をお示しになられるべきなのではありませんか」

 率直な物言いが実に頼もしい。
 感動していたら、カインはわざとらしく片眉を上げて驚いてみせた。
 さも「今アダムの存在に気づいた」といった反応に、不快感が募る。

「いつもは淑女たちを見守っているアスピディアス侯爵が、今宵は随分と積極的だな」

 いくら皇太子とはいえ、失礼すぎる物言いではないだろうか。
 それも気になったけれど、何より私の意識をさらっていったのは――

(え……? こうしゃく? 公爵? 侯爵? って、どちらにしてもすごい偉い人じゃない!?)

 貴族と違って感情を隠す訓練なんてしていない私は、つい動揺を顔に出してしまった。

「あ、えっと……!」

 アダムは気さくで、少しも偉ぶったところがない。だからてっきり「貴族ではあっても、高位ではないんだろうな」と勝手に思っていたのだ。
 混乱した私は、とりあえず急いで頭を下げた。

「知らなかったとはいえ、馴れ馴れしくしてしまい、失礼いたしました。アダム様も、高貴な御方だったんですね」
「お止めください。私は聖女様の手足となるべき身で――」

 言いかけたアダムを、いかにも「悪気はないですよ」といった顔のカインが遮った。

「なんだ、知らなかったのですか。アダムの家であるアスピディアス侯爵家は、皇女が嫁いだ過去すらある、由緒正しい血筋なのですよ。つまり、私の遠い親戚でもあるわけです」
「皇族の、遠い親戚……」
「ねえ、侯爵?」
「……。ええ、事実です」

 アダムが、私の嫌っていた皇族の親戚――その事実に、少なからず衝撃を受けた。けれどだからといって、アダムまで嫌いになるということはない。
 だって、アダムはいつだって私を支えて、そばにいてくれた。聖女としての価値にしか注目していない皇家と違い、ちゃんと一人の人間として接してくれた。
 辛かった異世界での生活で、その優しさにどれほど救われたことか。
 きっと、カインにはわかっていないのだろう。

「ふぅ」

 私が深呼吸をして動揺から立ち直ると、カインの瞬きが少なくなった。予想外のものを見たといった反応だ。

(たぶん、私からアダムを遠ざけたかったんだろうな。自分よりも仲が良いから。……まあ失敗したわけだけど)

 それでもカインは持ち前の頭の回転の速さで、すぐさま作戦を変更してきた。しおらしく哀れを誘う顔で、自身の胸の前に手を添える。

「余計なことを口走り、淑女に残酷な選択を迫ってしまいましたね。どちらも国の中枢を担う者ですから、聖女様からしたら断わりにくくなってしまったでしょう。配慮に欠けた振る舞いをお詫びいたします」
「い、いえ、そんな」

 皇太子に謝罪させたとあっては、ますます周囲の目が厳しくなるではないか。厄介な展開この上ない。
 慌てて本心とは違うことを言ってしまった。

「お詫びだなんてとんでもないです! 殿下にもお誘いいただけて嬉しかったです!」
「ほう、私を嫌っているわけではないと?」
「え、ええ」
「ではアスピディアス卿と私、条件は同じですね」

 これでは誘導尋問だ。美しい満面の笑みの裏に「してやったり」という顔が見える気がする。
 内心で悔しさに悶絶しつつ、引きつった微笑を返した。

「それでは好きなほうをお選びください。この国では同時に申し込まれた場合、淑女がどちらを選んでも不敬にはあたりません」

 そうは言っても、国の頂である皇族の誘いを断るのは、普通の貴族女性では難しいだろう。あの皇帝では、断った後に領地に嫌がらせをしてくる可能性だってある。

(そう、普通の貴族女性ならね)

 私は、家のしがらみがある貴族ではない。魔王がいる今、聖女の機嫌を損ねてもいいことはないから、せいぜい皇帝に嫌味を言われる程度だろう。
 ――という予想を立てた直後、私の表情から答えを察したらしく、カインが息だけで笑った。いつもの計算され尽くした微笑とは違う、本心が滲みだしたような……口元だけを歪ませた微笑。普段の偽りの輝きを消した瞳の奥は、どこか虚ろだった。

(まただ。この人、たまにこういう顔をする)

 出会った頃から胸に引っかかっていた、一つの疑問。
 二人きりのお茶会を辞退した時。手を繋ぐのを断った時。平手打ちをした時。――カインは怒るのではなく、なんとも表現しにくい表情を浮かべた。今もそうだ。
 じっと彼を見つめた私は思考を巡らせ……ピンときた。ずっと答えを掴みあぐねていたけれど、やっとわかった気がする。たぶんあれは――

(諦め、かな)

 虐待されて育ったという親友のイブリンが、たまに無意識でこういう顔をしていた。だから、なんとなくわかる。

 私の勝手な推測でいうなら――皇太子カインは、なぜか「自分が厭われるのは当然だ」と思っている。今だって表面上は強引に誘っておきながら、きっと頭では選ばれない未来を予想しているだろう。恐らく私を誘っているのは、皇帝に対するパフォーマンスだ。「自分はやれるだけのことはしました」と納得させるために、したくもない努力をして見せている。

(こんなに綺麗で何事も完璧にこなしてみせるのに、どうして自己評価が低いんだろう)

 意図せず漏れてしまっているのであろう彼の本心。それを見る度に、なんともいえないモヤモヤとした気分になる。この国の皇族は苦手なはずなのに、カインだけを拒みきれなかったのは、きっとこうした彼の内面を肌で感じていたからだろう。カインが父親と違い、弱き者のために努力していることも知っているからかもしれない。

(努力している人が報われない世界は、なんか嫌だな。よっぽどの犯罪者とか悪人じゃない限り、誰にだって好かれる権利はあるはずなのに。それを最初から諦めてるのって、悲しいというか、もどかしいというか……)

 イブリンとの記憶が蘇り、放っておけない気分になってきた。私の勝手な感傷が、アダムの手をとることに迷いを生じさせている。

(うーん、でもここの皇族はなぁ……)

 悩んだ末に、私は――

【選択肢】
(1)アダムの手をとった。→アダムのルートへ
(2)カインの手をとった。→カインのルートへ
(3)どちらにしても気まずい。「やっぱり具合悪いです」と言って、とりあえず逃げた。→アベルのルートへ